妖精の木を誤って伐採か。デヴォン
- Wataru Kashirabe

- 9月15日
- 読了時間: 3分

イングランド南西部のデヴォンで14日、建設業者が妖精の木を誤って伐採する事件が起こった。事件があった場所はデヴォン北部のサウス・モルトン郊外。P局エクセター支部の発表によると、土地の再開発計画に伴う整地作業中に、作業員が丘の上にあった一本立ちの木を切り倒してしまったという。
作業員は伐採予定の木だと誤認して作業を行った旨の供述をしている。P局の調べによると、この再開発プロジェクトは行政事業の一つであり、作業に関わっている業者も隠されし世界のことを知らない一般の者たちであることが分かっている。P局は現在のところ、今回の伐採は故意によるものではないと判断している。
今のところ妖精側からのアクションは何もない。一般的な伝承上、妖精の木を切り倒した場合、それに関わった者に後日不幸が訪れたり、最悪の場合死亡するケースが確認されている。また、妖精の木を切り倒した場所に家を建てた一家が、その後精神を病んでしまったという話も残っている(アイルランド、ドニゴール県)。P局は経過を監視しつつ、ロンドン支部から妖精事案の専門チームを派遣する方針であるとしている。
一方、この木は事前に“妖精の木”であると認定されていたものであるため、今回の事件についてはP局の管理体制の甘さも指摘されている。これに対し、エクセター支部の警部は「慢性的な人員不足もあり、様々な分野にまで手が回らないのは事実だ。この手の土地に起因する問題に関しては、より地元の民間伝承に精通したリミナルズのみなさんに、ぜひご協力をいただきたいものだ」と語った。
補足(Liminalがより面白くなる、実際の伝承)
田舎に行くとたいてい、そう遠くない野原にぽつんと1本だけ生えている木があるものだが、こうした木は地元では妖精に守られた木であるとされる場合がある。これが妖精の木である。こうした木はサンザシ属であることが多いが、基本的にぽつんと1本だけ離れているような木は、妖精の木とされることが多い。
こうした伝承は特にアイルランドに多い。たとえば、アイルランドのミーズ県にはこんな伝承がある。
バリダフにあるとある農場の近くにある大きな畑の真ん中に、一本立ちの木があった。人々はこの木を切るのはよくないと思っていたが、ある日一人の男が溝の覆いを作るためにこの木を切ろうと、ノコギリを持ってやってきた。彼が作業を始めると、「それ以上切ったら後悔するぞ」という声がどこからか聞こえたが、男はかまわずに切り進めた。すると半分まで刃が入ったところで、今度は木から血が滴りはじめた。しかし男はそれでもやめようとせず、さらに刃を押し込んでいったが、そこで男はさすがに我が身が心配になり、血を流す木にノコギリを残したまま逃げ帰った。そして男は一週間と経たないうちに亡くなったという。この木は今でもそこに残っており、男が切ったところから上は朽ちてしまったものの、切り株自体はしっかりと残っている。
最後に一つ「妖精の木」伝承が生まれた背景について少し面白い説を紹介しよう。イングランドでは、密輸業者が自分たちの隠れ家の近くに人を近づけぬために、そこら一体に幽霊が出るという噂を広めたことがあった。妖精の木にまつわる伝承にも似たような背景があるのかもしれない。少なくとも郊外の人気のない場所に立つ「一本立ちの木」は、非合法的な活動をする人々が集まるための目印になった可能性も十分にあるのではないだろうか。
もっとも、隠されし世界においては、こうした一本立ちの木は実際に妖精たちの棲家になっているのであろうし、件の密輸業者は人払いのために亡霊を利用した死霊術師だったのかもしれないが。




